出産直後に母親が育児放棄をしてしまったために、日本で初めての人工哺育となった白くまの赤ちゃんの記録を昨夜見たのだが、途中で泣けてきた。
わずか680gで産まれたピースを10歳の今では280kgという立派な北極くまに育て上げた飼育員さんの苦労は大変なものだっただろう。 産まれた直後は2時間以上続けて睡眠をとることなど出来なかったそうだ。 ミルクを飲ませ、ゲップをさせ、おしりを刺激して便を出させ、母熊のようにいつもそばに寄り添い・・・という日々。 大の字になって眠るピースはまるで人間の子のようだが、人間の子なら育児書もあり誰かに聞けば育児法も教えてもらえるが、白くまはそうはいかない。初めて尽くしの中でここまで立派に育て上げたのは飼育員さんの「生きていて欲しい」という強い思いがあったからだ。 飼育員さんを母親のように慕い、夜は飼育員さんの家族に囲まれて育つ幼いピースはとっても可愛い。見ているこちらは微笑ましいその姿に頬がゆるみっぱなしだった。 が・・・どれほど可愛らしくとも白くまである以上いつまでも人間と触れ合っているわけにはいかない。 夜、動物園の冷たいコンクリートと柵に囲まれた部屋の中で、飼育員さんと離れて過ごさねばならなくなったピースは一晩中悲しそうな声を出し、そんなピースを柵越しにじっと見守る飼育員さんは無理やり引き離された親子のようで、その気持ちを思えば泣けてくるのだ。 北極くまというのはストレスにとっても弱い動物なのだそうだ。 ピースは飼育員さんとのスキンシップをやめた直後から時々けいれんを起こすようになる。ある時はプールで遊んでいる時にけいれんを起こし溺れかけた。 だから今でも飼育員さんはピースがプールに入る時は監視用のモニター画面から決して目を離さない。 ピースを育てるにあたって飼育員さんは「目標は立てない」という目標を立てたそうだ。次はここまで、それが出来たら更にここまでという目標を立てると、そうならない時にイライラしてしまいそれがピースに悪影響を与えるからだ。 これは私たち人間の子育てにも通じる。 親の思う通りに子どもは育たないと思えば、この子のペースで育てばいいんだと思えば、気がラクになる。 まずは元気に育ってくれさえすればいい、それだけでありがたいものなのだ。 飼育員さんは「今日もピースが元気でありますように」と毎日神に祈ると言う。日本初の人工哺育の記録更新なんて関係ない。 ただただピースに生きていて欲しい・・・それだけなのだ。 親というのはそういうものなのだ。
by hobomanzoku
| 2010-08-13 00:03
| あれこれ
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